『 言葉にできない 』


隊長が帰ってくる。パリでの任務が終わったからだ。
みんなは隊長が帰ってくることをとても喜んだ。
どのように祝ってあげようか。
どのように迎えてあげようか。
色々楽しそうに相談していた。
僕も隊長が帰って来てくれると嬉しいし、一緒に居るととても楽しい。
帰ってきたら「お帰りなさい」と言おう。「お疲れ様」と言おう。
そう、心に決めていた。

誰かの帰りを待つなんて今までしたことがなかった。
自分が他人を心配するなんて思いもよらなかった。
待っている間は、ただ漠然とした日常が流れているだけだった。
でも、帰ってくる日にちが分かるとその日までの日数がとてもとても長く感じた。

慣れないことに頭を使ったのか、帰ってくる当日、風邪をこじらしてしまった。
みんなは心配して劇場に残ろうとしたけど、港まで迎えに行く予定だったから、
一人で残ると言ってみんなを送り出した。

一人での劇場。
いつもはにぎやかな場所が水を打ったように静かだった。
眠りに就こうとしても、寝つけられなかった。
隊長がいつごろ着くのか気になって仕方がなかった。

気が付くとノックする音が聞こえた。
いつの間にか寝っていたらしく、少々驚いた。
「どうぞ」
開いたドアの所に隊長が立っていた。
寝起きのためか、いきなりのことに戸惑ってしまった。
「レニ、ただいま。気分はどうだい?」
聞きなれた声。
待ちわびていた人が目の前に居る。
「あ、・・・。」
声が出ない。
あれほど言おうと思っていた言葉が出ない。
「お帰りなさい」
この一言さえも言えない。
もどかしい。
「レニが風邪を引くなんて珍しいな。」
情けなくて顔が見れない。
何もできない自分にひどく腹が立った。
「・・・」
「どうしたんだい?レニ。」
隊長は心配そうに寄ってきた。
次の瞬間、自分でも驚く行動をとっていた。
隊長に抱きついていた。
「レニ!?」
隊長の慌てる声が聞こえる。
隊長のにおい
隊長の体
そこに在るものを全身を使って確認した。
大切な人がここに居た。
涙が出た。
「隊長・・・」
「レニ・・・」
隊長の大きな手が僕を優しく包む
「ただいま、レニ。」
「お帰りなさい、隊長・・・」




あなたに会えて本当に良かった
嬉しくて
嬉しくて
言葉にできない 




■紅刃様■大レニ■2003/06■相互リンク記念
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