『 pray 』少しだけ指先が冷たい。 でもぎゅっと握り締めているとボクの体温で温まっていくようで、だんだん温かくなっていく。 ボクにはあげられるものが何一つないけれど、こうしてつないだ手からボクの体温が伝えられる。 ボクが唯一つ、あげられるもの。 そしてこの冷たさは確かに隊長がココにいるという証。 半年前、巴里に行ってしまったときはこうして、今日を一緒にいられるとは思えなかった。 けれど確かにここに・・・・・・ボクの隣にいる。 「どうかした?」 珍しく着物を着た大神が不思議そうにレニを見つめてくる。 けれどレニは穏やかに首を振り、「なんでもない」と呟いた。 「隊長の指先が少し、冷たいと思っただけ」 「ごめん。昔から指先が冷えるんだ・・・・・・冷え性かな」 そう言って大神は空いている手を握ったり開いたりしてみる。 レニはそっと大神の手を取り、両手で包み込んだ。 「こうしていれば温かくなるよね」 「・・・・・・そうだね」 自分の手を温めようとしてくれるレニの姿が微笑ましくて大神は優しく笑った。 花組にやってきたころのレニからは想像もつかない優しい仕草。 そしてこうして2人寄り添っていることなど予想どころか想像すらできなかった。 想像できなかった今この時がとても愛しい。 決して手放したくはないと思う。 「レニの手は暖かいね」 「ボクもあんまり体温が高い方じゃないから温かくはないと思うけど・・・・・・」 「とても温かいよ」 「そう・・・・・・よかった」 大神は片手をそっとレニの手から抜き取るとそっとレニの頬を撫でた。 「隊長?」 「もう十分温まったよ。ほら、温かいだろ?」 「・・・・・・うん」 レニの頬に触れた大神の指が優しく頬を滑り、ポンと頭を叩いた。 「さて、行こうか」 「そうだね」 大神はレニの手に預けたままの手でそっとレニの手を握った。 レニも大神の大きな手を握り返す。 2人は並んで歩き出した。 「でも、こうしてまた隊長と初詣にいけるなんて思わなかった」 「俺も巴里にいるだろうと思ってたから、嬉しいよ」 「そうだね・・・・・・おかえり隊長」 「ただいま、レニ」 面と向かって言われ、レニはポッと赤くなって目を逸らした。 なんだか気恥ずかしくて大神に顔を直視できない。 慌てて違う話題を持ち出した。 「今年もおみくじ引こうね」 「う・・・・・・今年こそはいいおみくじを引きたいなぁ」 「もう凶はコリゴリ?」 「まぁね。元旦からずぶ濡れは勘弁してほしいな」 はは・・・・・・と笑って鼻の頭を掻く大神ににもクスリと笑った。 「風邪を引いたら大変だしね」 「レニが看病してくれるなら風邪を引いてもいいな」 「隊長っ」 「でもレニと一緒にいるのならこうして手をつないで出かける方がいいよ」 「・・・・・・ボクもだよ」 2人は顔を見合わせて笑いあった。 1年前、ボクは神様に祈った。 どうか隊長と一緒にいさせてください。 どうかボクをあの暗闇の中に連れ戻さないでください。 今年、ボクはまた神様に祈る。 神様、ボクは今幸せです。 |